私は土光さんを尊敬していますので、この本を買って読んでみましたが、たいへん勉強になる良い本でした。
何度か立ち読みをしたことはあるのですが、すでに知っているエピソードが多く、買って読むきっかけを失っていたのですが、読んでみると、改めて土光さんのすごさを再確認し、自分も頑張っていこうという気にさせられます。
日本人は全員、土光さんに関する本を読むべきです。
私は、土光敏夫さん、坪内寿夫さん、瀬島隆三さんなど、昭和の日本経済を支えた先輩方の本を読むのが好きですが、皆さんに共通しているのは、その責任感の強さだと思います。
責任感 → 勉強家 → 質素な生活 → 現場主義 → 従業員を大切にする → 感謝の気持ち → 政府や政治家に依存しない
まあ、いろいろとつながっていきますが、責任感の強さが根底にある。
105ページから原子力発電の話になりますが、土光さんは原発推進派で、「本気でやれば故障は起きない」と発言されたそうです。
原発にかかわる人たちが土光さんのような責任感をもって、ことにあたっているのであれば我々国民も安心できるのですが、そうはならない。
今朝もテレビで福島原発事故の様子がテレビで放送されていましたが、発言する人すべてに全く責任感が感じられない。
いかに責任を回避するかということしか考えていないな。
こういう人たちに土光さんのように責任感をもってやれというのは、所詮無理な相談です。
民間企業の経営者は失敗したら倒産します。
経営者は財産・信用・社会的地位などを失い、従業員は失業者となって路頭に迷う。
しかし東京電力は株式会社といっても実質的に国営企業だ
あのような大事故があっても国営企業だから経営者と株主が保護される代わりに、従業員がリストラされ、消費者は電気代値上げで赤字補てんを強要される。
付近住民に対する損害賠償なども、基本的に税金が使われる。
これでは東京電力の経営者に責任感を持てという方がムリですね。
そのような状態で原発を再稼働させるのは大いに疑問です。
ストレステストや安全基準などの技術上の問題ではない。責任感の問題
なので、最低限「原発事故=会社破産」という社会の仕組みが必要だと思います。
破産とはつまり
・破産手続きの一環として会社の事業を新設会社へ譲渡
・売却代金を配当や補償に充てる
・従来会社の株式は紙切れとなり、資産価値を失うことで株主はその責任を負う
・もちろん経営陣はクビ(従業員は新会社に雇用されるが、経営者は職を失う)
実際の対応とは全く逆。
これが資本主義社会だと私は思う。
176ページに「パンとサーカス」という話が出てきます。
「巨大な富を集中し、繁栄を謳歌したローマ市民は、次第にその欲望を増大させ、タダのパンを与えられて労働を忘れ、サーカスに代表される消費と娯楽に明け暮れるようになる。その結果、ローマ市民はそれまでローマ帝国を支えてきた自立自助の勤労精神を失っていき、周囲の蛮族の侵入によって滅ぶ」
日本もヤバいな
私は責任感を育てるために、日本はもっと自営業者、特に若い人の独立・創業・開業を促進する世の中にするべきではないかと思います。
責任感を身に着けるには、自営業者になるのが一番
若い人は、製造業の海外移転などで就職も厳しいでしょうから、起業を考えるチャンスを与えてあげるべきだと思う。
ところが、日本では税制も年金などの社会保障もすべてサラリーマン優遇で自営業者冷遇だ。
このあたりから変えていくべきではないでしょうか?
また、168ページには、カイル・バスさんという人の話が紹介されています。
「日本の財政破綻は避けられない(中略)財政破綻すれば、日本人は資産の四分の一を失うだろう。こうした恐ろしいことが起きて初めて日本にはいい時代がやってくる。一ドル=200円か300円になって日本の輸出競争力が大幅にアップする」
これも怖い話ですが、私もいずれそのような時代が来ると思います。
で、問題はそうなったときに、まだ我々日本人が勤勉・真面目で責任感のある民族であり続けているのかどうか?
これが問題ですね。
土光さんの本を読んで、じっと耐えて、日本経済復活の日を待ちましょう。