「事業再生」カテゴリーアーカイブ

社会主義国的

JALは結局どうなったのかが気になったのでこの本を読みました。
小室直樹先生は、
「社会主義国では役人が企業に命令する」
「破産と失業は資本主義の本質である」
とおっしゃっておられましたが、この本を読むと日本が資本主義国ではなく、社会主義国的であることがよくわかります。

JALは法的整理とはいっても会社更生法を申請したもので、
・旧株主は100%減資によって株主責任をとる
・旧取締役は辞任
・銀行債務は消滅
・融資金額が最も多かった日本政策投資銀行債務は政府保証(470億円)があったので税金負担で代位弁済
・一般商業債務(買掛金や未払金など・リース債務を含む)は残る
・年金債務は減額されたが残る
・政府系金融から9千億円の投資と融資(投資が3.500億円)
という、社会主義国的なスキームが実行されました。

その後、V字回復と再上場を果たした稲盛さんは立派だと思いますが、
それ以前の債務整理の段階では、同じ法的整理でも、スポンサーを探して「破産⇒事業譲渡」をやるべきではなかったか?
債権者平等の原則
経済的合理性

金融円滑化法

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金融円滑化法で返済猶予を受けても資金繰りが改善されず、倒産する会社が増えているそうです。
リスケでは解決できないですね。
資金繰りに苦労しておられる会社は、銀行返済だけではなく、税金、社会保険料、経費支払なども滞っていることが多いと思います。
記事には企業再生ファンドの設立など、金融円滑化法の終了後を見据えた対策の整備が急務だと書いてありますが、金融支援的なことは結局、問題を先送りするだけだ。
会社の収益構造を根本的に再構築するしかないな。

将来展望

中小企業金融円滑化法が来年も延長されるかどうか?
これを心配しておられる方が多い。
まあ、これも大事なのですが、もっと大事なことが。

実在の会社ではないですが、たとえばこんな会社

①高齢の経営者であと5年ぐらいで引退。(たとえばあと5年で80歳になるなど)
②後継者はいない(子供は医者や弁護士になっている)
③多額の借入金があるが、約定通り返済しているので、今も新規融資は受けることができる
④担保物件をすべて処分しても完済できない
⑤不景気で売上減少。増える見込みはない

景気の悪い時に、真面目に約定通り返済をおこなっている立派な会社です

でも、40代50代までの経営者なら、今から大逆転があるかもしれませんが、高齢の社長さんは時間がない。
借金を完済できる見込みがない。
で、経営者にもしものことがあれば、

経営者死亡 → 多額な借金があるので、相続人は相続を放棄 → 会社は破産 → 従業員は失業

こういう会社が日本にはたくさんあると思います。
つまり社長さんが死んだら何も残らない。
帝国データバンクだったと思いますが、全国の社長さんを調べたら平均年齢は59歳ぐらいだったそうです。
半分以上が高齢者。

そんな昭和の気骨ある経営者が、何代にも亘って、何十年も事業を行ってきて、最後に何も残らないのはとても残念なことです。
せめて従業員を代表者にして事業を継続し、雇用を守ることができれば。
事業継続。事業を守る方法を考えるべきではないでしょうか?
金融円滑化法も大事ですが、10年ぐらい先の将来展望をぜひ、一緒に考えましょう。

いちばん重要な問題

今年のはじめから事業再生の取り組みをおこなっておられるお客様があり、先日弁護士さんをまじえて打ち合わせをしました。

最近、「事業再生」などのキーワードで検索して、コンサルタントなどのページを見ると、いかにして借金を帳消しにするか?についてのノウハウが語られているものが多いのですが、私はこれは「最も重要なテーマ」ではないと思います。
いちばん重要な問題は、再生後の会社が、この厳しい経済状況において、いかに利益をあげ、会社として生き延びていけるようにするか?これを考えることだと思います。

ダニエル・ピンクさんの名著「ハイコンセプト」に書いてあったのですが、
(1)他の国ならこれをもっと安くできるだろうか?
(2)コンピューターなら、これをもっとうまく、早くできるだろうか?
(3)自分が提供しているものはこの豊かな時代の中でも需要があるだろうか?
という視点で、事業を見直すこと。
これが一番大事なことだと思うなあ。

で、打ち合わせ中に改めて気付いたのですが、そのような仕事とは、一言でいうなら「面倒くさいこと」ではないでしょうか?
誰もやってくれないような面倒くさいこと。
そういう仕事は外国もコンピューターもやってくれないし、需要はある。
やってくれる人も少ないので価格破壊も進まない。
そういえば野口悠紀夫さんの本に、「モノの値段は下がっているが、サービスの価格は下がっていない」とも書いてあったな。
そういう仕事に集中して利益をあげる体質を作ることが最も重要。
もちろん過大な負債は何とかしないとダメですが、それが最重要課題ではないと私は思います。