先日、先輩の税理士さんに珍しいものを見せていただきました。
「大東亜戦争割引国庫債券」と書いてあります。
発効日は昭和17年8月21日、償還期日は10年後の昭和27年10月8日
発行価格7円で償還時には10円になる。
話には聞いたことがありますが、本物の戦時国債券をみると、ちょっと手が震えてきました。
保存状態が良く、まるで最近発行されたもののように見えますので、大東亜戦争が遠い昔の「歴史上の出来事」ではなく、私たちが生きた昭和時代の現実の事件だと実感させられます。
ところで、「インフレは税」と言われますが、その意味は、
①国債発行
②インフレ(貨幣価値低下)発生
③国民(貸手)の債権の実質価値が下がる
④政府(借手)債務の実質負担が下がる
ということです。
つまり、インフレによって国民財産の価値が下がって、政府の実質債務負担が下がる。
富が国民から政府に移転していることになるので、実質的に税金ということになります。
ちなみにこの国債券は、今、ここにあるということは償還されなかったということですが、もう時効でしょう。
(10年で時効と書いてあります)
仮に、時効になっていなかったとしても、日銀に持って行ったら10円償還してくれるだけです。
当時の10円は結構な価値があったでしょうが、今の10円はチロルチョコレートも買えません。
昭和17年に7円も貸したのに、平成26年に10円しか返ってこない!
これが「インフレは税」ということです。
ご存知のとおり日本では戦後、強烈なインフレが起こりました。
どれぐらいのインフレだったのか?
消費者物価指数で確認しようとしたのですが、上記資料では、この国債が発行された昭和17年の消費者物価指数の数値が無いので、「企業物価戦前基準指数」で確認したところ、
349.2(昭和27年)÷ 1.912(昭和17年)=182.6倍
つまり物価が182倍になっているので、やはり強烈なインフレだったようです。
牛丼280円が51,128円になったようなもんです
で、この戦時国債の流れを償還期日である昭和27年の貨幣価値で考えてみます。
①国民は昭和17年に、戦時国債を昭和27年の貨幣価値に換算して1,274円(7円の182倍)で購入した(つまり国に貸した)
②政府は1,274円を借りた
③10年たって償還期日が来たので、額面通り10円返してもらった。(実質1,264円損した)
④政府は10円返すだけで済んだ(1,264円トクした=実質借金負担が減った)
国民が損して国が得したので、これは税。
現在の国の借金は750兆円ぐらいと言われていますが、仮にこれがすべて今年発行された10年債だとして、もし10年間で貨幣価値が182分の1に下がるようなインフレが起こったとすると、政府は実質的には 750兆円÷182=4.1兆円 だけ返せばよいことになります。
貸手である国民には750兆円帰ってくるのですが、その時点の750兆円は、実質的に4.1兆円の価値しかない。
その頃、定期預金も同じように、1,000万円あったはずが、実質価値は1,000万円÷182=54,945円になっている。
うまく説明できませんがインフレは恐ろしいな