無料で、簿記の知識が不要で、自動的に会計処理?

私の事務所のお客様はほとんど弥生会計を使っておられます。
会計王、ミロク情報サービスを使っておられる方もいますが、いずれにしても「クラウド会計」ではない普通のインストール版の会計ソフトを使っておられます。
が、例外的に今年の確定申告では、お二人のお客様がいわゆる「クラウド型会計ソフト」を使って会計資料を作成されました。
理由はお二人ともMACユーザーだからです。
仕事の流れは次の通り。

①一年分の会計データをお客様が入力し、招待などしていただいてクラウド上のデータを私が見ます。
②私は会計データを、いつも使っているインストール版の弥生会計に読み込み、そこでいくつかの修正仕訳や決算整理仕訳を入力し、青色申告の決算書を作成して所得税の代理申告を行いました。
③お客様には、私が入力した仕訳を一覧表にして、メールで送信し、その通りに入力していただいて、私の作成した決算書と同じ結論になることを確認してから、次年度への繰り越しを行っていただきました。
④総勘定元帳も私の弥生会計で印刷し、ファイリングしてお送りしました。

MACユーザーならこれでちゃんと確定申告ができますので、クラウド会計ソフトは使えると思います
但し、全部のソフトを私は試したわけではないので、「クラウド会計ソフトのほとんどは」と表現しますが、
この手の会計ソフトは「無料」と言いながら現実的に無料では使えないし、簿記の知識は必要で、全然自動ではないです。
おまけに普通版の弥生会計などに比べてかなり使いにくい。
なので、WINDOWSユーザーなら、やっぱり弥生会計の普通版(オンラインではない普通バージョン)がお勧めで、ほとんどこれ以外に選択肢はないと思います。
だいたい、これからこの厳しい時代に商売をやっていこうとする人が、
「無料で、簿記の知識が不要で、自動的に会計処理ができるソフト」
なんていうものが仮に存在したとしても、そんなものを使おうと考えること自体がおかしいと私は思います。
サラリーマンではない、自営業者なんですから、簿記・会計のことを勉強すべきです。
私は今は税理士ですが、32歳まで自動車のタイヤメーカーで営業や商品開発をやっていましたので、簿記のわからない人の気持ちがよくわかります。
そんな私が、いま自分で経理をやっておられる事業主さんにお話ししているのは、
「簿記の知識のうち、あなたのご商売の経理で必要になる部分だけを理解してください」
ということです。
資格試験にチャレンジされたり、弥生会計の攻略本みたいなのを買われるのも結構ですが、一から十まで理解しようとするとかえって難解なイメージを持ってしまい、勉強意欲がなくなってしまいます。
それで「無料で、簿記の知識が不要で、自動的に会計処理ができるソフト」に頼ろうと考えたりするのです。
もちろん、公認会計士や税理士を目指したり、資格を取って就職を有利にしたいといった人は別ですが、それ以外で、
「これから商売を始めるので会計のことを勉強しよう」
と思っておられる方は、できれば最初の数年は我々税理士などのサポートを受けながらご自分で会計入力をされることをお勧めします。
多分二回ぐらい決算をすれば、簿記の知識のうち、ご自分の商売で必要となる部分をご理解いただけると思います。
さらに一度、税務調査を受けていただければ、どこをどのように調査されるのかがわかりますので、より簿記の知識が深まるのですが、これは自分では「調査に来てください」なんていうわけにはいかないので、ちょと無理か?

個人事業主は、儲かったらうれしいし、損したら悲しいですね。
で、損をしたら次は儲かるように対策を講じないといけません。
だから、正確な月次試算表が必要となり、そのために経営者に方にも必要最低限の簿記の知識を持っていただく必要があるのです。
ちなみに今回クラウド会計を使われたMACユーザーのお二人は、必要な簿記の知識をお持ちです。
特にお一人は売上(受取報酬)から源泉所得税が天引きされて入金されるご商売ですが、きちんと処理しておられます。
報酬の源泉所得税は、会社によって処理が異なり、

・税込報酬-(報酬+消費税)×0.1021
・税込報酬-報酬×0.1021
・源泉徴収しない会社
・源泉徴収した金額から、さらに振込手数料をマイナスして振り込む会社

などいろいろです。
「全自動」などと豪語するクラウド会計ソフトは、これをどうやって処理するんですかねえ?
私のお客様は、ご自分の発行した請求書との差額から推定するなどしてきちんと入力されています。
が、どうしても決算時には源泉所得税(仮払税金)の貸借対照表上の金額と、請求書や支払調書から読み取る理論値が一致しないので、そこは私がチェックして修正しています。
源泉所得税(仮払税金)は、ご本人の納税額や還付税額に直接影響しますので、かなり重要な処理項目です。
なので決算時には正確さが要求されますが、源泉所得税に関する知識をお持ちであれば、普段の月次レベルで、おおまかな損益状況を把握するという意味でははほとんど問題がありません。

というわけで、このはなしはドンドン長くなってキリがなくなるので、今回は以上。
皆さん頑張って会計入力にチャレンジしましょう!