円安

野口先生の本が面白かったので一日で一気に読みました。
戦中から現在に至るまでの日本経済の流れを、先生ご自身の個人史を交えながら解説しておられます。
日本はいまだ1940年体制、すなわち戦時経済体制=社会主義経済体制のままである。
この体制は戦後復興から80年代にかけての経済発展期においては有効であったが、90年代以降のグローバル経済においては不適合。
したがって日本は資本主義化し産業構造を変えるべきだ。

というストーリーで、今迄に書かれた本の内容とあまり変わりませんが面白い
小室直樹先生の「資本主義のための革新」という本に
「シュンペーターは、大企業の官僚化によって資本主義は社会主義化し、衰亡し滅亡すると論じた」(248ページ)
と書かれていますが、全くその通りで、欧米において資本主義経済によって自動車や飛行機、テレビなどが発明・工業化され、それを社会主義国・日本がカイゼンを加えて大量生産・大量販売に成功した。
というのが80年代までのながれで、シュンペーターはこういうことを予想しておられたのでは?
経済が発展すればするほど(飽和状態)資本主義的のメリットが減少していくような気がします。

今は日本に代わって新興工業国が世界の工場になっているわけですが
野口先生はこれからの日本は産業構造を変えて、高度サービス業や新しい製造業(水平分業)を発展させるべきだと書いておられます。
これは確かに絶対に正しいことだと思うのですが、はたしてそんなことが可能でしょうか?
私は日本においては1940年体制がずっと続くような気がするな。

「経済学に「要素価格均等化定理」というものがあります。「貿易が行われる世界において、二つの国が同じ技術で生産活動をしていれば労働などの生産要素が国境を越えて動かなくとも、賃金が均等化していく」という定理です。この定理によれば、中国が工業化して日本と同じ生産活動を行うようになれば、日本の賃金は長期的には、中国並みに低下していくことになります。これこそが90年代以降現実の世界で起こっていることの本質です」(kindleなのでページ数がよくわかりませんが位置No3788)

円安で日本企業の円ベース利益は増えますが、賃金は?
仮に月給30万円としたら、1ドル100円の時には3,000ドルですが1ドル150円になったら2,000ドルとドルベースでみると下がる。
円の価値が下落していって、国際的に見た日本の賃金が下がり、中国などの賃金水準に近づく。
だからといってすぐに製造業が国内回帰するかどうかわかりませんが、結局は賃金があまり変わらないなら品質の良い日本製が売れるというようになること以外に日本経済が復活する方法はないのでは?