デフレではない

野口悠紀雄先生のたいへんタメになる本です。
この本で、「デフレ」という言葉の意味について次のような解説があります。
(9ページから10ページ)

「デフレ」という言葉について。
経済学の教科書的な議論において、「デフレーション」という言葉は、すべての物価が一様に下落する現象を指す。この過程において、さまざまな財やサービスの間の相対価格が変化することはない。つまり、これは「物価水準」(あるいは絶対価格)の下落である。これは、通常は貨幣供給量が不足するために生じる現象である。
しかし実際に起きていることは、右のような一様な価格下落ではない。工業製品の価格動向とサービスの価格動向の間に、著しい差異がみられる(経済学の用語を使っていえば「相対価格」が変化している)。したがって、この現象を「デフレ」と呼ぶのは、厳密に言えば誤りである。
この区別がなぜ必要かといえば、必要な対策が異なるからである。デフレは、貨幣供給量が過少であるなどのマクロ的な経済要因によって引き起こされる。したがって、それに対処するには、貨幣供給量の増大などのマクロ政策が必要だ。それに対して、相対価格が変化する場合に必要なのは、産業構造や経済行動を変えることである。

昨日、インフレ目標を決めて金融緩和をおこなうなどという日銀の方針が報道されましたが、
長年にわたって日本は金融緩和(低金利、保証協会保証付き融資、政府系金融機関融資、住宅ローン税制優遇)を行っているのに、一向に「デフレ」が解消されません。
理由は野口先生が言われるように、今の日本はデフレではないのにデフレの場合の対策を講じているからではないか?
工業製品の価格が下がったのは外国の安い労働力が作るからである。
貨幣供給が過小であるからではない。
現在の状況を改善するために金融緩和を行っても、企業のとる行動は、ビジネスモデルを変えることではなく、借金で得た金で安売りの損失を一時的に補填することではないか?
日本での企業間の競争は、「よいものを安く作るものが勝ち」ではなく、「たくさん借りることができたものが勝ち」というヘンなルールになる。
あらゆる業種で大手企業の激安作戦によって、資金調達力の弱い中小企業がつぶれてしまうという事態が増えるのではないか?